最長の糸 〔第194回〕

大化の改新から半導体まで、糸は3億6千万本もつれている

起点: 大化の改新(646) ・ 結末: 半導体産業の台頭(1976) ・ 経路 362,873,440 通り
大化の改新から半導体まで、糸は3億6千万本もつれている の挿絵(マカミ)

646年の大化の改新——公地公民を掲げた、あの土地改革。1976年の半導体産業の台頭——DRAMで世界を席巻した、あの技術革命。稲と口分田の時代と、シリコンと回路の時代。この一三〇〇年を隔てた二つに、因果の糸で道がつくと言われたら、信じるだろうか。教科書はこの二つを別々の章に、まるで無関係のように並べている。

つくのである。しかも362,873,440本——3億6千万通り超の道が。

同じ大化の改新から男女雇用機会均等法までは6億本あった。終点が変われば、道の数も変わる。同じ源から出た網が、行き先ごとに違う密度で広がっているのだ。近い時代の、地味な出来事ほど、そこへ至る糸は太く束になる。半導体という現代の一点にも、飛鳥からの糸が3億本以上も撚り合わさっている。

最短は20手。1,330年を二十回の「だから」で飛ぶ。改新の理念が大宝律令に結実し、律令が典薬寮を生み、集積した医書が『医心方』に、その土壌に道三の医学校が、反発から山脇東洋の腑分けが、蘭書との一致に驚いて『解体新書』が続く。実証の姿勢が国学へ移り、尊王攘夷が幕末の動乱を経て維新を呼び、地租改正が寄生地主を、その解体が自作農を生み、そして高度経済成長を支える。ここから先が、この道の見どころだ。高度成長による事務機械化の需要が計算機市場を膨らませ、参入企業が殺到して「電卓戦争」が勃発する。その戦争で磨かれた集積回路の量産技術が半導体メーカーに蓄積し、通産省主導の超LSI共同開発でDRAM量産へ結実した——半導体産業の台頭である。

飛鳥の土地台帳から、シリコンウェハーまで。一本の糸は、二十の関節を折り曲げながら、途切れずつながっている。しかもその途中では、糸が医学の中を——『医心方』も腑分けも『解体新書』も——律儀に通り抜けていく。土地改革から半導体へ向かう最短の道が、なぜか人体解剖を経由する。因果の糸は、まっすぐには進まない。

もっとも、これは最短の一本にすぎない。遠回りの道は89手、総数は3億を超える。歴史は一本道ではない。646年と1976年のあいだには、3億6千万本の網が張られている。私たちが習う一本の矢印は、その網からたまたま抜かれた糸なのだ。

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