外国人労働者に頼る国は、プラザ合意から生まれた

2019年、日本は在留資格「特定技能」を新設し、介護・建設・外食などの現場に、単純労働も含めて外国人労働者を受け入れる方針へ舵を切った。少子高齢化で人手が足りない——理由はそう説明される。間違いではない。だが糸をたぐると、その根は昭和のニューヨークにある。
ドル高是正の、たった一枚の合意だ。
1985年、プラザホテル。先進5か国がドル高是正で合意する(プラザ合意)。急激な円高が輸出産業を直撃し、円高不況を恐れた日銀は公定歩合を史上最低水準まで下げた。行き場を失った緩和マネーが土地と株へ殺到する——バブル経済である(1986)。
だが宴は続かない。地価高騰を抑える総量規制と利上げが引き金となり、地価と株価が同時に暴落した(バブル崩壊、1991)。不良債権処理に追われた企業は採用を絞り、就職氷河期が到来する(1998)。
ここが分岐点だった。氷河期に非正規へ追いやられた世代は、経済的な理由から結婚と出産をためらう。未婚化・晩婚化が出生率を押し下げ、少子高齢化が加速した(2005)。そして働き手の枯れた現場が、外国人受入れの門をこじ開ける(2019)。
プラザ合意→バブル→崩壊→氷河期→少子高齢化→特定技能。 五手、三十四年の将棋倒しである。
データで裏を取ろう。因果絵巻から「プラザ合意」を抜くと、消える出来事は11件。バブルもその崩壊も、金融ビッグバンも、山一・拓銀の破綻も、ゼロ金利政策も、村上春樹『ノルウェイの森』も、100円ショップの拡大も、婚活とおひとりさまも、そして少子高齢化と外国人受入れも——道連れに消える。揺らぐ出来事は15件。
もしあのドル高是正が無かったら。円高不況も超低金利も無く、あの狂乱の地価も、その崩壊も、失われた10年も無い。氷河期世代は非正規に沈まず、少子化はこれほど急がず、外国人に頼らねば回らない現場も、また違う顔をしていたかもしれない。
バブルは日本人の記憶では「イケイケの好景気」として語られる。だがその同じ合意が、三十数年後の介護施設や建設現場の人手不足まで、静かに書き込んでいた。狂乱の好況と、静かな人手不足。正反対に見える二つは、一本の因果でつながっている。
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