もしも百景 〔第74回〕

国鉄がJRになった引き金を引いたのは、国際連合だった

起点: 国際連合の成立(1945年) ・ 結末: 国鉄分割民営化(1987年) ・ 消滅 5
国鉄がJRになった引き金を引いたのは、国際連合だった の挿絵(マカミ)

1987年、日本国有鉄道は旅客6社と貨物1社に分割され、JRとして再出発した。累積赤字と労使対立に沈んだ巨大公社の解体劇——国内の行政改革の話、で片づきそうに見える。

だが因果絵巻でその源流をたどると、JR誕生の引き金は日本の外、しかも42年前のニューヨークにある。国際連合の成立である。

一手ずつ、地球を一周させよう。1945年、大戦の反省から国連が生まれ、その総会がパレスチナ分割決議を採択する。これを受けてユダヤ人勢力がイスラエル建国を宣言し、反発したアラブ諸国との対立が続く。未解決の領土・難民問題を土壌に、占領地奪還を狙うエジプト・シリアが開戦し、第四次中東戦争が勃発。するとアラブ産油国が石油を武器に価格を吊り上げ、石油危機が世界を襲う。

日本ではこの危機で高度成長が終わり、税収は伸び悩む一方で赤字国債が累増した。そこで「増税なき財政再建」を掲げる第二臨調が設けられ、その答申の柱が三公社の民営化——累積赤字に沈む国鉄の分割民営化だった。

国連 → イスラエル建国 → 第四次中東戦争 → 石油危機 → 第二臨調 → 国鉄分割民営化。5手で、中東の砂漠が日本のローカル線につながる。

データで裏を取ろう。因果絵巻から「国際連合の成立」を抜くと、消える出来事は5件。イスラエル建国も、第四次中東戦争も、石油危機も、第二臨調と行政改革も、そして国鉄分割民営化も——この一本の因果鎖が丸ごと消える。揺らぐ出来事は40件にのぼる。

もし国連が生まれず、パレスチナ分割決議もなかったら。イスラエルは建国されず、中東戦争も石油危機も別の形をとり、日本の財政再建の号砲も鳴らなかったかもしれない。JRという看板は、生まれずにいた可能性がある。

改札を通るたび、私たちは知らずに世界史の帳尻を踏んでいる。ローカル線の運命が、42年前の国際政治の一手に握られていたとは、なんとも壮大な回り道である。

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