ウォール街の大暴落は、列強の植民地争奪から生まれた

1929年10月、ニューヨークのウォール街で株価が暴落した。信用取引で膨れ上がった投機の泡が弾け、世界恐慌の幕が開く。原因を問えば、行き過ぎた株式投機、で答えは足りているように見える。
だが因果絵巻で49年さかのぼると、あの暴落の遠因は、株でも銀行でもなく、ヨーロッパの植民地争奪に行き着く。帝国主義の時代である。
一手ずつたどろう。1880年ごろ、重工業化した列強は市場と植民地の獲得競争に走る。後発のドイツが急速に台頭したことが土壌となり、孤立を恐れた独墺伊が三国同盟を結ぶ。すると欧州は対抗的な同盟網に二分され、その緊張が地域紛争を全欧の大戦へ拡大させ、第一次世界大戦が勃発する。
ここで舞台が大西洋を渡る。参戦が遅く戦場にならなかったアメリカは、連合国への物資供給と融資で一気に債権国化した。ヨーロッパが疲弊するそばで、アメリカだけが富を蓄える——それが戦後の投機的な繁栄を招き、実体を超えて膨らんだ株価が、ついにウォール街で崩落する。
帝国主義 → 三国同盟 → 第一次世界大戦 → アメリカの繁栄 → 大暴落。植民地の奪い合いが、49年かけてニューヨークの取引所を叩き落とす。
データで裏を取ろう。因果絵巻から「帝国主義の時代」を抜くと、消える出来事は8件。独墺伊三国同盟も、三国協商の成立も、第一次世界大戦の勃発も、ロシア革命も、アメリカの繁栄と投機も、ウォール街株価大暴落も、世界恐慌も、ブロック経済化も——20世紀前半の激動が、まとめて舞台から降りる。揺らぐ出来事は347件にのぼる。
もし列強が植民地を奪い合わず、対抗同盟が組まれなかったら。第一次世界大戦は起こらず、アメリカの一人勝ちも、その泡がはじける大暴落も、姿を消していただろう。
株価の暴落は、投機家だけの罪ではない。40年以上前に地球の裏側で始まった土地の奪い合いが、めぐりめぐって取引所の電光掲示板を赤く染める。歴史はいつも、遠くの原因ほど大声で請求書を回してくるものらしい。
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